あれはもう、6年前のおはなし。
あたしは、お母さんの車に乗って、
高校入試の会場へ向かっていた。

車では、ラジオを流していて。
いつものAM放送だった。
オハヨウチュウネンタンテイダン だった。

そのラジオで、誰か、えらいひとの紹介をしてて、
名前なんて全く覚えてないけど、
彼の成功の秘訣を訊いていた。

彼は言った。
「何事にも感謝をするのです。
たとえばピンチの時だって、そのピンチこそ、成長のチャンスなのですから。」

何にでも「ありがとう」をつける彼の、
妙に語呂のいいフレーズを、まだ覚えている。

ピンチはチャンスだありがとう。

その言い回しに、あたしと母はおおわらいして、
なんにでも「ありがとう」をつけてみながら、会場入りした。

頭ではわかっていても、
やっぱりしんどい時がある。
どんなに縁だって言われても、
あたしは社会に必要とサレテナイノカシラ、
なんて考えちゃうこともある。
誰に慰められても堕ちていくこともある。

それでも呪文のように

ピンチはチャンスだありがとう
ピンチはチャンスだありがとう
ピンチはチャンスだありがとう

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